中学国語の「漢詩(漢文)」についてまとめています。ここでは、漢文の読み方の理解、漢詩の形式や「起承転結」の構成などへの理解が必要です。また、漢詩に描かれた情景を浮かべ、作者の気持ちをとらえるなど楽しめるとなおさらいいです。それでは、中学国語の「漢詩(漢文)」をみていきましょう。
漢詩の形式
漢詩の形式は、次のような構成となります。
- 絶句…一編が四句(四行)から成る詩。五言絶句と七言絶句がある。
- 律詩…一編が八句(八行)から成る詩。五言律詩と七言律詩がある。
絶句の例
絶句は、一編が四句(四行)から成る詩で、五言絶句と七言絶句があります。
まず、五言絶句の有名な漢詩を見てみましょう。孟浩然(もうこうねん)の「春暁」です。訓読文で紹介します。
次に、七言絶句の有名な漢詩を見てみましょう。李白の『汪倫に贈る』などが有名です。
律詩の例
律詩は、一編が八句(八行)から成る詩で、こちらも五言律詩と七言律詩があります。杜甫の「春望」は、有名な五言律詩です。46歳の時に安禄山の乱に巻き込まれて長安で軟禁状態に置かれてしまったときに書いた作品です。原文(白文)で紹介します。
絶句の構成「起承転結」
一編が四句(四行)から成る詩である絶句は、次の構成をとります。
- 起句…歌い起こす。
- 承句…起句を承けて展開する。
- 転句…場面を転換させる。
- 結句…全体を締めくくって結ぶ。
押韻と対句
押韻と対句も漢詩のルールです。押韻とは、同じ音の響きの漢字(音読み)を句の末尾にそろえるルールで、対句は、律詩だけのルールで、形や意味のうえで似ている二つの句を並べることです。
- 押韻…五言の場合、絶句でも律詩でも偶数句の句末が押韻になる。
七言の場合、絶句でも律詩でも第一句と偶数句の句末が押韻になる。 - 対句…律詩で、第三句と第四句、第五句と第六句が対句になる。
孟浩然の『春暁』は五言ですが、第一句と偶数句が押韻となっているので注意が必要です。また、杜甫の『春望』は絶句ですが、第一句と第二句が対句になっていることも覚えておきましょう。
漢文の訓読
- 送り仮名…歴史的仮名遣いで、漢字の右下に片仮名で書かれる。
- 返り点…(レ点)一字返って読む。 (一・二点)二字以上隔てて上に返って読む。
漢詩の代表例
代表的な漢詩である、「春暁」、「絶句」、「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」についてみていきたいと思います。左から右に読んでください。
春暁(孟浩然)
形式は、五言絶句となります。
●白文
春 眠 不 覚 暁
処 処 聞 啼 鳥
夜 来 風 雨 声
花 落 知 多 少
●書き下し文
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少
●現代語訳
春の眠りは心地がよく、夜が明けるのも気づかないほどです。
あちらこちらから鳥のさえずりが聞こえてきます。
そういえば昨夜は風雨の音がしていたな。
いったいどれほどの花が散ったことでしょうか。
●鑑賞
春ののどかな情景が描かれています。転句に前夜の雨の描写をはさむことで印象を強めています。
絶句(杜甫)
形式は五言絶句となります。
●白文
江 碧 鳥 愈 白
山 青 花 欲 然
今 春 看 又 過
何 日 是 帰 年
●書き下し文
江は碧にして鳥は愈よ(いよいよ)白く
山は青くして花は燃えんと欲す
今春看す又過ぐ
何れ(いづれ)の日か、是れ帰年ならん
●鑑賞
故郷を思う心情が描かれています。美しい情景が帰郷できずに悲しむ作者の姿を印象づけています。
黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る(李白)
形式は、七言絶句となります。
●白文
故 人 西 辞 黄 鶴 楼
煙 花 三 月 下 揚 州
孤 帆 遠 影 碧 空 尽
惟 見 長 江 天 際 流
●書き下し文
故人西の方、黄鶴楼を辞し
煙花三月揚州に下る
孤帆の遠影、碧空につき
惟だ見る長江の天際に流るるを
●現代語訳
昔からの友人である孟浩然が、黄鶴楼に別れを告げようとしている。
霞だって花が咲いているこの三月に揚州へと下っていくのだ。
船の帆がだんだんと青空に吸い込まれるように小さくなっていく。
そのうちただ長江が天際に向かって流れているのを見ているだけになってしまった。
●鑑賞
友人との別離の悲しみが描かれています。転句・結句のどこまでも広がる風景が、旅立つ孟浩然の孤独な姿と見送る李白の悲しみを表現しています。
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