レモンやお酢が「酸っぱい」と感じるのは、それらが酸性の性質を持っているからです。一方、石けんや重曹水はアルカリ性で、ヌルヌルとした感触があります。酸性とアルカリ性の違いを調べるには、リトマス試験紙やpH試験紙を使った実験が効果的です。さらに、酸とアルカリを混ぜると起こる中和反応についても、実験を通して理解を深めることができます。
この記事では、酸とアルカリの性質を実験で確認する方法や、pHや中和反応のポイントをわかりやすく解説します。最後にはテスト対策に役立つ演習問題も用意しているので、ぜひチャレンジしてみてください!
酸とは
酸とは、水に溶けると酸性を示す物質です。もしあなたがお風呂に入り、お風呂のお湯が酸性になると、あなたは酸ということになります。有名な酸として、塩化水素や二酸化炭素、硫酸などがあります。
酸の電離
酸を水に溶かして水溶液にしたり、加熱して液体にすると電離し、陽イオンと陰イオンが生じます。酸が電離すると必ず水素イオンH⁺という陽イオンが生じます。つまり、水溶液が酸性になる正体は水素イオンH⁺なのです。
- 塩化水素(塩酸)の電離
塩化水素→水素イオン+塩化物イオン
HCl→H⁺+Cl⁻
- 硫酸の電離
硫酸→水素イオン+硫酸イオン
H₂SO₄→2H⁺+SO₄²⁻
酸性の水溶液の性質
酸を水に溶かし、酸性にした水溶液には次のような特徴があります。
- 青色リトマス紙を赤色に変える。
- 緑色のBTB溶液を黄色に変える。
- pHが7よりも小さい。
- マグネシウムなどの金属と反応し水素が発生する。
- なめると酸っぱい味がする。
水素イオンの移動問題
塩酸に含まれるイオンの移動に関する問題です。うすい硝酸カリウム水溶液で湿らせたろ紙の上に、うすい塩酸をしみ込ませた糸を置き、下の図のように、電圧をかけるとどのリトマス紙の色が変化するでしょうか。
うすい塩酸中のイオンは、陽イオンの水素イオンH⁺と陰イオンの塩化物イオンCl⁻です。電圧をかけると、陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に移動します。
- 陽イオン(水素イオン)H⁺→陰極側へ移動
- 陰イオン(塩化物イオン)Cl⁻→陽極側へ移動
酸性の正体は水素イオンH⁺なので、陰極側の青色リトマス紙が赤色に変化します。
❷リトマス紙を赤色、BTB溶液を黄色にし、pHは7より小さい!
❸水素イオンH⁺は陽イオンなので電圧をかけると陰極に移動!
アルカリとは
アルカリとは、水に溶けるとアルカリ性を示す物質です。もしあなたがお風呂に入り、お風呂のお湯がアルカリ性になると、あなたはアルカリということになります。有名なアルカリとして、水酸化ナトリウムやアンモニア、石灰などがあります。
アルカリの電離
アルカリを溶かすと電離し、陽イオンと陰イオンが生じます。アルカリが電離すると必ず水酸化物イオンOH⁻という陰イオンが生じます。つまり、水溶液がアルカリ性になる正体は水酸化物イオンOH⁻になるのです。
- 水酸化ナトリウムの電離
水酸化ナトリウム→ナトリウムイオン+水酸化物イオン
NaOH→Na⁺+OH⁻
- 水酸化バリウムの電離
水酸化バリウム→バリウムイオン+水酸化物イオン
Ba(OH)₂→Ba²⁺+2OH⁻
アルカリ性の水溶液の性質
アルカリを水に溶かし、アルカリ性にした水溶液には次のような特徴があります。
- 赤色リトマス紙を青色に変える。
- 緑色のBTB溶液を青色に変える。
- フェノールフタレイン溶液の色を無色透明から赤色に変える。
- pHが7よりも大きい。
- 皮ふをとかす。
水酸化物イオンの移動問題
水酸化ナトリウム水溶液に含まれるイオンの移動に関する問題です。うすい硝酸カリウム水溶液で湿らせたろ紙の上に、水酸化ナトリウム水溶液をしみ込ませた糸を置き、下の図のように、電圧をかけるとどのリトマス紙の色が変化するでしょうか。
水酸化ナトリウム水溶液中のイオンは、陽イオンのナトリウムイオンNa⁺と陰イオンの水酸化物イオンOH⁻です。電圧をかけると、陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に移動します。
- 陽イオン(ナトリウムイオン)Na⁺→陰極側へ移動
- 陰イオン(水酸化物イオン)OH⁻→陽極側へ移動
アルカリ性の正体は水酸化物イオンOH–なので、陽極側の赤色リトマス紙が青色に変化します。
❷リトマス紙を青色、BTB溶液を青色、フェノールフタレイン溶液を赤色にし、pHは7より大きい!
❸水酸化物イオンOH⁻は陰イオンなので電圧をかけると陽極に移動!
酸性・アルカリ性の水溶液
酸・アルカリの単元でも説明したように、水に溶けると水素イオンH⁺が生じる物質を酸、水酸化物イオンOH⁻が生じる物質をアルカリといいました。
- 塩酸(酸性の水溶液)
HCl→H⁺+Cl⁻ - 水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性の水溶液)
NaOH→Na⁺+OH⁻
今回は、酸性の水溶液で覚えておきたいもの、アルカリ性の水溶液で覚えておきたいものを紹介します。
酸性の水溶液
酸性の水溶液は、名称に「〇〇酸」とつく場合が多いです。また、なめると酸っぱかったり、シュワシュワとする性質があります。
酸性の水溶液 | 溶質(溶けているもの) | その他覚えること |
塩酸 | 塩化水素(気体) | 刺激臭 |
硫酸 | 硫酸(液体) | |
炭酸 | 二酸化炭素(気体) | |
酢酸(お酢) | 酢酸(液体) | 刺激臭 |
雨水 | 二酸化炭素など | |
レモン汁(クエン酸) | クエン酸 |
酸性を調べる指示薬
水溶液が酸性かどうかを調べるには指示薬を使います。酸性の場合、指示薬の色が次のように変化します。
指示薬 | 色の変化 |
青色リトマス紙 | 青色→赤色 |
BTB溶液 | 黄色 |
pH試験紙 | 赤色 |
アルカリ性の水溶液
アルカリ性の水溶液は、名称に「水酸化〇〇水溶液」という名称がつきます。また、なめると苦かったり、手で触るとぬるぬるする性質があります。
アルカリ性の水溶液 | 溶質(溶けているもの) | その他覚えること |
水酸化ナトリウム水溶液 | 水酸化ナトリウム(固体) | |
水酸化バリウム水溶液 | 水酸化バリウム(固体) | |
アンモニア水 | アンモニア(気体) | 刺激臭 |
石灰水 | 石灰(水酸化カルシウム) | 別名は水酸化カルシウム水溶液 |
セッケン水 | セッケン(固体) |
アルカリ性を調べる指示薬
水溶液がアルカリ性かどうかを調べるには指示薬を使います。アルカリ性の場合、指示薬の色が次のように変化します。
指示薬 | 色の変化 |
赤色リトマス紙 | 赤色→青色 |
BTB溶液 | 青色 |
pH試験紙 | 青色 |
フェノールフタレイン溶液 | 無色透明→赤色 |
【問題】酸・アルカリの問題
下図のように、硝酸カリウム水溶液をしみこませたろ紙上に、赤色、青色リトマス紙を置き、中央に10%の塩酸をしみこませたろ紙を置いて金属クリップの両端に電圧をかけたところ、リトマス紙のある部分の色が変化していった。
(1)図で色が変化する部分を、ア~エの中からから1つ選び、記号で答えよ。
(2)図で色が変化する理由を、原因となるイオン名を用いて、簡潔に説明せよ。
(3)塩酸と同じように、リトマス紙の色を変化させる水溶液を、次のア~オの中からすべて選び、記号で答えよ。
ア 水酸化ナトリウム水溶液
イ 塩化ナトリウム水溶液
ウ エタノール
エ 炭酸水
オ 酢
(4)中央のろ紙に、うすい水酸化ナトリウム水溶液をしみ込ませ、金属クリップの両端に電圧をかけた場合、どのリトマス紙の色が変化するか。ア~エの中から1つ選び、記号で答えよ。
(5)水酸化ナトリウムが水に溶けて電離するようすを、化学式とイオン式を用いて表せ。
【解答・解説】酸・アルカリの解答
(1)イ
塩酸は酸性の水溶液なので、青色リトマス紙を赤色に変色させます。酸性の正体は塩酸中の陽イオンである水素イオンH⁺なので、陰極側に引き寄せられる。したがって、陰極側の青色リトマス紙であるイの色が変化します。

(2)酸性を示す水素イオンは陽イオンなので、陰極に引き寄せられ、青色リトマス紙を赤色に変えるから。
酸性の水溶液中には、必ず水素イオンH⁺が存在します。水素イオンは陽イオンなので、陰極側に引き寄せられます。
(3)エ、オ
炭酸水は二酸化炭素が水に溶けた水溶液で、弱い酸性を示す物質です。酢は酢酸が溶けた水溶液で、これも弱い酸性を示します。水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ性で、塩化ナトリウム水溶液(食塩水)とエタノールは中性になります。
・塩酸…気体の塩化水素
・硫酸…液体の硫酸
・炭酸…気体の二酸化炭素
・ホウ酸…固体のホウ酸
・雨水…気体の二酸化炭素
・レモン汁…クエン酸
(4)ウ
水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ性の水溶液なので、赤色リトマス紙を青色に変色させます。アルカリ性の正体は水酸化ナトリウム水溶液中の陰イオンである水酸化物イオンOH⁻なので、陽極側に引き寄せられる。したがって、陽極側の赤色リトマス紙であるウの色が変化します。

(5)NaOH→Na⁺+OH⁻
水酸化ナトリウムの化学式はNaOHで、電離するとナトリウムイオンNa⁺と水酸化物イオンOH⁻に電離します。水に溶けて水酸化物イオンOH⁻が生じ、アルカリ性を示す物質をアルカリといいます。
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