生物と環境で生物濃縮という現象を学習します。生物にとって有害な化学物質や金属が、食物連鎖を経て生物の体な中で濃縮されていく現象です。その仕組みを学習します。また、身近な環境を調査するために必要な水質調査についてのポイントも確認します。
生物濃縮とは
生物濃縮(せいぶつのうしゅく)とは、自然のはたらきでは分解できない化学物質や金属などが、生物の体の中に蓄積し、生態系での食物連鎖を経て濃縮されていく現象をいいます。食物連鎖で上位に位置する消費者ほど高い濃度で蓄積され、生物の体に大きな影響を与えます。
工場の排液などに含まれる水銀やカドミウム、農薬として使用されてきたDDT、コンデンサーの絶縁体に使用されてきたPCB、ダイオキシンなどが原因となる物質です。生物濃縮による環境被害は、レイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』で論じられ、よく知られるようになりました。
生物濃縮の仕組み
詳しく生物濃縮の仕組みを見ていくと、次のような連鎖で生物の体の中に有害な化学物質や金属が蓄積されていきます。
- 工場や鉱山などから有害な化学物質、金属が排出される。
→自然界では分解されない - 植物・動物プランクトンの体内に蓄積する。
→プランクトンの体内でも分解されない - 小魚が有害な物質を蓄積したプランクトンを食べる。
→有害物質が濃縮される - 大型の魚が有害な物質を蓄積した小魚を食べる。
→食物連鎖の上位の生物ほど有害物質が濃縮される - 汚染された魚を人間が食べ、健康に害を及ぼす。
排出された有害な物質が少なかったとしても、食物連鎖を通じて濃縮されるのが恐ろしいですね。
水質調査
身近な河川の水質を知る方法には多くのものがあります。まずは、水の流れる量や流れる速さ、水の濁り具合を見る、においを調べる等の物理的方法があります。きれいな水はにおいが少なく透明ですが、濁っていたりどぶなような臭いがする場合は水質が悪化しています。
次に、化学的方法によって水質調査ができます。試験紙や薬品を使って、水に溶けている物質の量を調査する方法です。簡単な水質検査キットであるパックテストを使えば、水に溶けている酸素の量や、亜硝酸の量を調べることができます。また、水のpHを調べる方法もその一つです。pHは、酸性・中性・アルカリ性を示す数値で、中性でpH7、7より数値が小さい場合は酸性、7より数値が大きい場合はアルカリ性を示しました。ちなみに公害の一つである酸性雨の場合、pHは5.6程度になります。
最後に、水の中にすむ生物を調べる生物的方法があります。きれいな水にすむ生物、汚い水にすむ生物がいるので、その河川に生息している生物を調べるだけで水質調査ができるのです。
❷化学的方法…試験紙などを使ってpHや水に溶けている物質を調べる。
❸生物的方法…水の中にすんでいる生物を調べる。
水の中にすむ生物
中学校の教科書には、水質調査の方法として水の中に生息する生物を調べる方法が載っています。河川などの汚れの程度は、天候や水量、時期などによって大きく変化します。調べたその日がたまたま汚れがひどかったということも考えられます。
しかし、水の中にすむ生物は、その日その日で変わるわけではありません。平均的な水質によって生息する生物が決まるので、水質調査に適した方法なのです。水の中に生息する生物を水生生物といいます。水質調査の目安となる水生生物を紹介します。
●きれいな水にすむ生物
サワガニ、ブユ、ウズムシ、ヒラタカゲロウ、カワゲラは覚えておきましょう。
●少し汚い水にすむ生物
カワニナ、ゲンジボタル、ヒラタドロムシ、ヤマトシジミ、スジエビは覚えておきましょう。
●汚い水にすむ生物
ヒメタニシ、シマイシビル、ミズムシは覚えておきましょう。
●たいへん汚い水にすむ生物
サカマキガイ、セスジユスリカ、アメリカザリガニは覚えておきましょう。
特に、きれいな水やたいへん汚い水に生息する生物がよく出題されます。これらの生物を覚えておくと、どこが汚水を流しているのか、水質悪化の原因を突きとめられるようになります。
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