【高校受験対策国語】古今著聞集の古典読解問題です。「徒然草」「方丈記」と並び、「古今著聞集」もよく出題される作品の一つです。
鎌倉時代、橘成季によって編纂された世俗説話集。
・世俗…世間一般に見られるさま、世の中の風俗・習慣
・説話…古くより伝承されて来た話、伝説
【問題】古今著聞集の古典読解問題
次の古文を読んで、あとの問いに答えなさい。
<注釈>
醍醐=醍醐寺のこと。京都市にある。
大僧正=僧の最高位。
恪勤者=高い位の人物に仕えて雑用を行う侍。
おどろきて=目を覚まして。
比興のこと=おもしろいこと。
(橘成季『古今著聞集』)
問一 下線部a「くひける」、b「もちながら」、c「心えて」、d「わらひける」の主語を次のうちから選び、それぞれ記号で答えなさい。
ア:実賢 イ:江次郎
問二 下線部「餅をとりてくひてけり」とありますが、このようにしたのは、どのような理由からですか。現代語で二十五字以上三十五字以内で書きなさい。
問三 この古文中には会話文を示すかぎかっこ(「」)が一か所抜けています。かっこのつく部分を文中から書き抜きなさい。
問四 この文章からわかる実賢の人物像として最も適切なものを次のうちから選び、記号で答えなさい。
ア:自分の行動を棚に上げて、目下の江次郎のあやまちを責め立てる心の狭い人。
イ:誰に対しても公平で、自分の欠点を決して隠そうとしないまじめな人。
ウ:江次郎の失態をとがめずに、それを笑い話にして人々に明るく話す度量の広い人。
エ:江次郎の腹立たしい行為について相手構わず話をする、意地の悪い人。
【解答・解説】古今著聞集の古典読解問題
問一:aア bア cイ dア
a.bを含む一文は「醍醐の大僧正実賢」、dを含む一文は「僧正」で始まっている。a.bの「実賢」、dの「僧正」のあとには主語を示す「はが」が省略されている。cは、「江次郎といふ恪勤者のありける」とあることに着目する。
問二:実賢がうなずいたのを、自分にこの餅を食べろというそぶりだと思ったから。
まず、直前の「われにこの餅くへと気色ある(自分にこの餅を食べろというそぶりだ)」に着目し、次に、江次郎がこのように判断したのは、僧正のどのような動作を見たからなのかをさらに前からとらえる。
問三:ここにもちたりつる餅は
「とたづねられければ」と、引用を示す「と」がある。
問四:ウ
僧正の人柄は、最後の一文「僧正比興のことなりとて、諸人にかたりてわらひけるとぞ。」に表れている。
醍醐の大僧正実賢が、餅を焼いて食べていたときに、(僧正は)ひどく居眠りをしてしまう人で、餅を持ったまま、うとうとと眠ったところ、前に江次郎という雑用を行う侍がいたのだが、僧正が眠ってうなずくのを、自分にこの餅を食べろというそぶりだと判断して、走り寄って、(僧正が)手に持っている餅を取って食べてしまった。僧正が目を覚まして、「ここに持っていた餅は(どうした)」とお尋ねになったので、江次郎は「その餅は、早く食べよということでしたので、食べました」と答えた。僧正はおもしろいことだと、多くの人々に語って笑ったということだ。
古文では、主語を示す助詞(「は・が」など)や主語自体が省略されることが多い。話の流れを押さえて、動作主や話し手を正しくとらえましょう。また、多くの場合、会話文の直後には引用を示す「と」や「とて」がある。この他、「言ふ」「問ふ」「答ふ」などの言葉を手がかりにして、会話文をつかむことが大切です。
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