【中学地理】覚えておくべき日本の水産業についてです。日本は四方を海に囲まれ、豊かな水産資源を活用してきた「水産大国」です。日本の水産業は、私たちの日々の食卓を支えるだけでなく、地域経済や文化、そして国際的な水産市場においても重要な役割を果たしています。しかし近年では、乱獲や資源の枯渇、環境問題、さらには輸入品との競争といった課題にも直面しています。本記事では、中学地理で覚えておきたい日本の水産業の基本について、特色や現状、そして課題をわかりやすく解説します。水産業の魅力と未来を考える第一歩として、ぜひ最後まで読んでみてください!
日本の水産業の歴史
世界有数の漁かく量日本は、1970年前後に一時ペルーにぬかれたが、長いあいだ漁かく量は年間1千万トンをこえ、世界1位であった。しかし、200海里問題などから漁かく量は減少し、中国が漁かく量をふやしている。
水産物の種類はたいへん多い。魚類のほか、えび・いか・たこなどの水産動物、あさり・ほたて貝・さざえなどの貝類、こんぶ・わかめ・てんぐさなどの海そう類がある。
日本で水産業がさかんな理由
【1】近海がよい漁場で、水産物が多い。東シナ海を中心に日本近海では、深さが200mまでの浅い大陸棚が広がる。大陸棚には魚のえさとなるプランクトンが多く、魚も多い。大陸棚には、各所にバンク(浅堆)とよばれる浅い部分があり、魚が集まりやすい。三陸沖など日本近海では、寒流の千島海流(親潮)と暖流の日本海流(黒潮)などがぶつかる潮目があって、魚の量も種類も多い。
【2】よい漁港が多い。三陸海岸のようなリアス(式)海岸が発達しているなど、海岸線の出入りが多く、よい漁港が多い。
【3】魚の消費が多い。日本では、仏教の影響もあってむかしから家畜の肉を食べる習慣がなく、もっぱら水産物を動物性たん白質源としてきた。いまでも魚の消費量は世界のおもな国では上位に入る。
【4】すぐれた漁かく技術。まわりを海に囲まれているので、昔から漁業がさかんで、さまざまな漁法がくふうされてきた。また、集魚灯や魚群探知機のような新しい設備も発達している。
漁業の種類
漁業の種類 | 特徴・内容 | 主な例 |
---|---|---|
沿岸漁業 | 沿岸地域で行われる小規模な漁業。個人経営が多い。 | アワビやサザエの採取、イカ釣り、定置網漁 |
沖合漁業 | 沿岸から離れた沖合で行われる漁業。中規模で、組織的に行われることが多い。 | サバ、イワシ、カツオ漁 |
遠洋漁業 | 海外や遠方の公海上で行われる大規模な漁業。高性能な大型漁船を使用。 | マグロ漁、カニ漁 |
養殖漁業 | 海や池などの特定の環境で魚介類や海藻を人工的に育てる方法。 | ホタテやカキの養殖、マダイやブリの養殖 |
栽培漁業 | 人工的に稚魚を育て、自然界に放流して成魚になってから漁獲する持続可能な漁業方法。 | サケの放流育成、アユの放流 |
日本近海は、世界の三大漁場の1つにあげられる北太平洋西岸漁場に属し、水産資源が豊富です。とくに東シナ海 やオホーツク海はプランクトンが豊富な大陸棚が広く、また太平洋側には寒流と暖流が出合う潮目があり、よい漁場になっています。
- 沿岸漁業…自分たちが住んでいる町のすぐ目の前の沖で漁をするので、その土地ならではの魚を獲ります。
- 沖合漁業…日本近海の2~3日で帰れる範囲の海が漁場で、20~150トンくらいの漁船を使い、まき網漁などで魚をとります。漁獲量では、日本の漁業の中で沖合漁業の占める割合は高く、約4割を占めています。
- 遠洋漁業…赤道直下の南太平洋や南アフリカ沖など世界の海が漁場です。しかし近年、各国が漁業のできる海域を制限(200海里漁業水域)しているため、日本の船が自由に魚をとることが難しくなり、漁獲量は減っています。
養殖漁業と栽培漁業
漁業 | 養殖漁業 | 栽培漁業 |
---|---|---|
特徴 | ずっと人が育てる | 最初だけ人が育てる |
養殖漁業
出荷サイズになるまでを水槽やいけすで育てます。すなわち、魚の子供の頃から大人になるまで、人の管理下で育てられています。養殖漁業は魚を水槽などで育て、放流はしない。
栽培漁業
卵から稚魚になるまでの一番弱い期間を人間が手をかして守り育て、無事に外敵から身を守ることができるようになったら、その魚介類が成長するのに適した海に放流し、自然の海で成長したものを漁獲することです。
水産物を原料とする工業
【1】水産加工業(水産製造)。大きな漁業基地をもつような漁港には、水産物を加工する工場がつくられていて、水産業都市であるとともに、工業都市の機能ももっている。水産加工物には、干もの・かんづめや冷とう製品、かまぼこなどの練製品などの食料品のほか、魚肥・魚油・飼料などがある。
【2】製塩業。岩塩(地中にかたまってある塩)がとれないわが国では、むかしから海水から塩をとってきた。
①海水から塩をとるには、塩分のこい海水をつくり、それを煮つめて塩の結晶を得る方法がとられる。塩分のこい海水をつくるのは、かつては塩田によって行われたが、1972年以降は工場でのイオン交良換樹脂膜法にかわり、塩田は消滅した。
(2)イオン交換樹脂膜法・・・工場で、海水に電流を通して化学的に塩分をこくし、それを煮つめて塩をつくる方法。
②塩は、食料用として使われるのは1割ほどで、大部分は工業用として使われている。国内産の塩は大部分が食料用であるが、工業用の塩は輸入にたより、オーストラリアやメキシコから輸入している。
漁家のくらし
【1】半農半漁。日本では、企業的に大規模な漁業を行っているのは遠洋漁場などほんの一部で、個人経営体
が大部分を占める。多くは兼業漁家である。とくに瀬戸内地方などでは、農業と漁業を兼ねている漁家も多い。これを半農半漁という。
【2】あとつぎ問題。漁業就業者に占める60歳以上の者の割合は年々ふえ、高齢化が進んでいる。これは、小規模経営で1人あたりの漁かく量が少なく、収人も少ないため、他産業にうつる人があとをたたない。若い人の間に、深夜・早朝などのきつくて危険な仕事をきらう傾向があるためである。農業同様に漁業も、小規模経営・兼業化・高齢化などの問題をかかえ、経営基盤の弱さを示している。
漁業の種類練習問題
次のア~オの漁業の名称を答えなさい。
(ア )漁業…海岸近くの海で行う漁業。
(イ )漁業…日帰りから数日かけて沖合いで行う漁業。
(ウ )漁業…数ヶ月にわたって日本から離れた海で行う漁業。
(エ )漁業…人工的に魚を育てて,出荷する漁業。
(オ )漁業…卵からふ化させた稚魚をある程度まで育て,川や海に放流してからとる漁業。
漁業の種類練習問題解答
ア沿岸
イ沖合
ウ遠洋
エ養殖
オ栽培
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