【中3理科】塩酸の電気分解とは?水素と塩素が発生する仕組みを徹底解説&確認問題付き

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イオンと化学変化で学習する、塩酸の電気分解について学習します。陽極と陰極から何が発生するのか覚えて、さらになぜその物質が出てくるのか理由まで理解しましょう。

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塩酸の電気分解

塩酸の電気分解を理解するには、次の内容を順序だてて覚えていく必要があります。

  1. 塩酸は気体の塩化水素が溶質である。
  2. 塩化水素の電離のようすを理解する。
  3. 陽極と陰極での電気分解を理解する。
  4. 発生した物質の性質を理解する。

まず、第1段階として、塩酸水溶液で、気体塩化水素が水に溶けているということをしっかりと理解しておきましょう。いい方を変えると、塩酸の溶質は塩化水素であるということです。

次は、気体の塩化水素が水に溶けてどのように電離するかを覚えます。電離とは陽イオンと陰イオンに分かれることでしたね。

塩化水素の電離

塩酸は、気体塩化水素を水に溶かしてできる水溶液です。したがって、塩酸は気体の塩化水素と水の混合物になります。まずは、塩化水素が水に溶け、電離するようすを確認しましょう。

塩化水素の電離

塩化水素の化学式はHClです。塩化水素が水に溶けると、水素原子H電子を1つ失い陽イオンである水素イオンH⁺に、塩素原子Cl電子を1つ受けとり陰イオン塩化物イオンCl⁻になります。このとき生じる水素イオンH⁺と塩化物イオンCl⁻の比は1:1になります。

このように、気体の塩化水素が水に溶け、水溶液中に水素イオンH⁺と塩化物イオンCl⁻が存在している水溶液が塩酸になります。

後で詳しく学習しますが、塩酸は酸性の水溶液です。なぜ酸性になるのかというと、水溶液中に水素イオンH⁺が存在するからです。塩化水素のように水に溶けて水素イオンH⁺が出てくると、その水溶液は酸性になるのです。

塩酸のポイント!❶塩酸の溶質は気体の塩化水素!
❷塩酸は塩化水素と水の混合物!
❸塩酸の中には水素イオンH⁺と塩化物イオンCl⁻が1:1で存在する!
❹塩酸は酸性の水溶液!酸性の正体は水素イオンH⁺

塩酸の電気分解

塩酸に電極を差し込み電流を流すと、塩酸が電気分解され、陰極から水素H₂陽極から塩素Cl₂が発生します。これは、塩酸中の陽イオンである水素イオンH⁺が陰極に、陰イオンである塩化物イオンCl⁻が陽極に引き寄せられるためです。

塩酸の電気分解

陰極から発生する水素と、陽極から発生する塩素の体積は同じですが、実際には陽極から発生する塩素の方が少なくなります。理由は、塩素が水に溶けやすいからです。発生しても塩素は水に溶けるので、実際の量よりも少なくなります。

塩酸の電気分解の化学反応式

塩酸(塩化水素の水溶液)HClを電気分解すると、陰極から水素H₂、陽極から塩素Cl₂が発生するので、次の化学反応式が書けます。

  • 塩酸→水素+塩素
  • 2HCl → H₂ + Cl₂

塩化水素の電離のようすを表す式と間違えないようしましょう。

電離式と化学反応式・電離式:HCl→H⁺+Cl⁻
・化学反応式:2HCl→H₂+Cl₂

塩酸の電気分解で発生した物質の性質

陰極からは水素、陽極からは塩素が発生しますが、それぞれ次のようにして発生した気体を調べます。

  • 水素H₂マッチの火を近づけると、爆発して水ができる
  • 塩素Cl₂赤インクをしみ込ませたろ紙を近づけると、色が抜けて白くなる

水素は燃える気体、塩素には漂白作用があることを利用して気体の判別を行います。あわせて、塩素の性質も覚えましょう。

●塩素の性質

下の表の内容を覚えてください。

化学式 Cl₂
黄緑色
水への溶け方 よく溶ける
水溶液の性質 酸性
空気と比べた重さ 重い
集め方 下方置換法
臭い 刺激臭(プールの臭い)
その他 殺菌作用、漂白作用
塩酸の電気分解のポイント!❶陽極から塩素Cl₂、陰極から水素H₂発生!
❷塩素は水に溶けやすいので、水素よりも少なくなる!
❸塩素は漂白作用がある!

塩酸の電気分解をもっと詳しく

塩酸の電気分解をイオンの動きや、電子の受け渡しまで詳しくみていきましょう。塩酸に電流を流すと、下の図のようなイオンの移動や電子の受け渡しが行われます。

塩酸の電気分解

次のような流れで覚えておきましょう。

  1. 陰イオンである塩化物イオンCl⁻陽極に引き寄せられる。
  2. 陽極に引き寄せられた塩化物イオンCl⁻電子を電極に渡し塩素原子Clになる。
  3. 塩素原子Clが2つくっつき、塩素分子Cl₂になって発生する。
  4. 陽極に渡された電子が、導線を通って陰極に移動する。
  5. 陽イオンである水素イオンH⁺陰極に引き寄せられる。
  6. 導線を通ってやってきた電子水素イオンH⁺が受けとり、水素原子Hになる。
  7. 水素原子Hが2個くっついて水素分子H₂になって発生する。

ここまで理解できれば、塩酸の電気分解は完璧です。

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【問題】塩酸の電気分解の問題

塩酸の電気分解右図は、塩酸を電気分解したようすを表した図である。これについて、次の各問いに答えなさい。

(1)塩酸の溶質は何か。名称を答えなさい。

(2)陰極に発生した気体Aを調べる方法とその結果を、陰極に発生する気体の名称を用いて、簡潔に答えなさい。

(3)陽極にたまった気体Bは、陰極にたまった気体Aよりも体積が少なくなっている。これは、気体Bにある性質があるからである。この性質を、陽極に発生する気体の名称を用いて、簡潔に答えなさい。

(4)陽極に発生する気体Bの性質として正しいものを、次のア~エから一つ選び、記号で答えなさい。
ア 空気よりも密度が小さい。
イ 水に溶けるとアルカリ性を示す。
ウ 無色透明である。
エ 赤インクをしみ込ませたろ紙を近づけると白くなる。

(5)塩酸の電気分解で起こった化学変化を、化学反応式で書け。

(6)次の文は、塩酸に電圧をかけたときのイオンの移動についてまとめたものである。文中の( )に適する語句を入れなさい。

塩酸に電圧をかけると、塩酸中の( ① )イオンが陽極に移動し、電子を( ② )いる。また、陰極には( ③ )イオンが引き寄せられ、電子を( ④ )いる。

【解答・解説】塩酸の電気分解の解答

(1)塩化水素
溶質とは水に溶けている物質のことです。塩酸の溶質は塩化水素で、刺激臭がする気体です。

塩酸に溶けているもの!・塩酸には気体の塩化水素が溶けている!
・塩酸は水と塩化水素の混合物である!

(2)マッチの火を近づけると、水素が音を立てて燃える。
塩酸の電気分解で、陰極から発生する気体は水素H₂になります。水素は、マッチの火を近づけると、音を立てて燃え、燃えた後は水ができます。

水素と塩素の調べ方!・水素…マッチの火を近づけると爆発して水ができる!
・塩素…赤インクを染み込ませたろ紙を近づけると、色が抜けて白くなる!

(3)塩素は水に溶けやすいから。
塩酸の電気分解で、陽極から発生する気体は塩素Cl₂になります。陰極で発生する水素も、陽極で発生する塩素も、実は同じ体積発生しています。しかし、塩素は水に溶けやすいという性質があるので、発生した気体が水に溶け少なくなっているのです。

塩素の性質!
❶黄緑色で刺激臭(プールのにおい)の気体!
❷水によく溶け、溶けると酸性を示す!
❸空気より密度が大きいので、下方置換法で集める!
❹殺菌作用・漂白作用がある!

(4)
陽極から発生する気体は塩素Cl₂には、次のような性質があります。
①黄緑色の気体
②刺激臭(プールの臭い)
③水に溶けやすく、溶けると酸性を示す
④空気よりも密度が大きい(重い)
⑤殺菌作用
⑥脱色作用

(5)2HCl→H₂+Cl₂
塩酸を電気分解すると、陰極から水素H₂陽極から塩素Cl₂が発生します。

塩酸の電気分解!塩酸の電気分解

(6)①塩化物 失って 水素 受け取って
塩化水素HClを水に溶かすと、水素イオンH⁺と塩化物イオンCl⁻に電離します。塩化物イオンはCl⁻は、マイナスの電気を帯びているので、陽極に引き寄せられ、陽極で電子を失い塩素原子に戻ります。一方の水素イオンH⁺は、プラスの電気を帯びているので、陰極に引き寄せられ、陰極で電子を受けとり水素原子に戻ります。

塩酸の電気分解

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