中学歴史の市民革命と産業革命について学習します。日本が江戸時代で鎖国政策をとっている間、世界では絶対王政への反発から市民革命が起こります。また、イギリスでは産業革命によって生産量が増大し世界の工場と呼ばれるようになります。日本の近代化に大きく影響を与えた、市民革命と産業革命について勉強していきましょう。
絶対王政への反発で市民革命が起こる
16~18世紀にかけてヨーロッパは、国王が絶対的な権力を持ち、専制的な政治を行う絶対王政の時代でした。国王は神から権力を与えられたとする王権神授説(おうけんしんじゅせつ)により、国民は王に従わなければならないとされていました。代表的な絶対王政は次の2つです。
- イギリス…エリザベス1世(16世紀後半)
- フランス…ルイ14世(17世紀後半)
貴族と聖職者は国王から特権階級を与えられ、国民には重税がかけられます。商工業者などの市民階級が自由と平等をめざして絶対王政を倒した革命を市民革命とよびます。市民革命のポイントとして、どの順番でどこの国で市民革命が起こったかが重要になります。市民革命が起こった順番に並べ替えさせる問題が非常に多いです。
この順番をまずは意識しておきましょう。それでは各市民革命の内容を見ていきます。
イギリスの市民革命
イギリスでは次の2つの革命を覚えておきましょう。
- 清教徒革命(ピューリタン革命)1642年
国王の専制に議会が反発しクロムウェルが市民や農民を率いて国王の軍隊を破る。しかし、クロムウェルの独裁政治に国民が反発し、再び王政に戻る。 - 名誉革命1688年
復活した王政に対しても国民が反発。議会は国王を追放し、オランダから新国王を迎える。血を流さずに話し合いだけで解決したため名誉革命と呼ばれる。
1689年、名誉革命で迎えられた新国王とイギリス議会のあいだに、政治に関する取り決めが行われます。この取り決めを権利の章典(けんりのしょうてん)といいます。
第1条 国王は、王権によって議会の承認なしに、法の効力を停止し、また法の執行を停止する権限があるという主張は違法である。
第4条 国王大権を口実として、議会の承認なしに、議会が承認するよりも長期間にわたって、また議会が承認するのと異なる態様で、王の使用のために金銭を徴収することは、違法である。
第6条 議会の承認がない限り、平時に国内で常備軍を徴集し維持することは、法に反する。
権利の章典により、国民の自由と権利が保障され、議会政治が確立します。
啓蒙思想がアメリカ独立戦争・フランス革命に影響を与える
イギリスで名誉革命が起こったころ、新しく合理的な啓蒙思想(けいもうしそう)が登場します。これらの思想がこの後のアメリカ独立戦争やフランス革命などに影響を与えます。
- ロック(イギリス)
人間は生まれながらにして自由と平等の権利を持っているとして、専制的な王に対して民衆が抵抗する権利を持つことを説き、名誉革命を支持。 - モンテスキュー(フランス)
『法の精神』により、司法・立法・行政の三権による三権分立を説いた。 - ルソー(フランス)
『社会契約論』により、人民主権の考えを説いた。
アメリカ独立戦争(1775年)
当時のアメリカにはイギリスの13の植民地がありました。イギリスはアメリカに一方的に課税しますが、アメリカからはイギリスの議会に国会議員のような代表者を送ることはできませんでした。これに対し不満が高まり、1775年にワシントンを総司令官として13の州の植民地の人々がアメリカ独立戦争を起こします。
1776年には独立宣言が出され、人間の平等、自由などが宣言されます。アメリカの初代大統領にはワシントンが選出されました。
すべての人間は平等であり、神によって一定の譲れない権利を与えられ、生まれながらにして生命・自由・幸福を追求する人権を持っている。この権利を確保するため、政府は人民の同意によってつくられる。もし、政府がこれら人民の権利をそこなう事があれば、人民は政府を改革あるいは廃止して、新しい政府をつくる権利を持っている。
フランス革命(1789年)
フランスには三つの身分が存在し、第一身分は聖職者(僧)、第二身分が貴族、第三身分は平民となっていました。このうち聖職者と貴族が特権階級とされ権力をにぎっており、平民は低く見られ重税に苦しんでいました。国王ルイ16世は、身分別の議会で増税を提案します。これに対し平民は国民議会を結成し反対しますが、国王はこれを武力で弾圧します。
1789年、パリの民衆が、政治犯などが収容されていたバスティーユ牢獄を襲い、革命の口火が切られ、国王側の軍を倒し革命が成立します。
その後、議会は人権宣言を出し、自由、平等、国民主権などを宣言します。これにより、フランスでは王政は廃止され、共和制が成立します。国王だったルイ16世と妻のマリー=アントワネットは処刑されます。
第1条 人は生まれながらにして自由で平等な権利を持つ。社会的な区別は、一般的な福祉に基づかない限り、ありえない。
第3条 あらゆる主権の源は、本来国民の中にある。(主権は国民にある)
第4条 自由とは、他人に害をおよぼさないかぎり、すべてのことを行える。
第11条 思想の自由および言論の自由は、もっとも尊い。
第17条 財産所有は、侵すことのできない神聖な権利で、これを奪うことはできない。
1804年には、ナポレオンが国民投票で皇帝となり、ヨーロッパの大部分を支配します。しかし、ロシア遠征の失敗によりナポレオンは没落します。
ナポレオンの没落後は、ヨーロッパは革命前のような状態にもどされ、再び王政となりますが、フランスではふたたび革命が起き共和制になっていきます。
産業革命によりイギリスが世界の工場に
18世紀後半にイギリスの綿工業から産業革命が起こります。これまでの工場制手工業(マニュファクチュア)から工場制機械工業に変わり、生産量が増大し、社会や経済のしくみが大きく変化します。これにより、イギリスは「世界の工場」と呼ばれるようになります。
石炭を燃料とする蒸気機関が新しい動力として利用され、ワットは蒸気機関を改良し、スティーブンソンは蒸気機関車を発明します。19世紀になると、フランスやドイツなどのヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国でも産業革命が進められました。
資本主義と社会主義
産業革命で生産力が向上したことで、資本主義という考え方が広まります。資本主義とは、生産のもとでになる資本を持つ者が労働者を雇って生産するしくみになります。
産業革命で機械化が進んだことにより、多くの職業では熟練工がいらなくなります。賃金の安い子どもや女性も労働力として雇われ、工場や土地を持つ資本家と、それらを持たない一般の労働者の経済格差が広がりました。また、低賃金・長時間労働による資本家と労働者の対立が激しくなり、労働者は労働組合を結成し、資本家に賃金の引き上げや労働条件の改善などを要求します。
このように、経済格差、労働問題が深刻化する中でマルクスの社会主義という考えが生まれます。貧富の格差の原因は資本主義社会にあると考え、平等な社会を目指す思想になります。マルクスの思想は20世紀の労働問題に広く影響を与えました。
【確認問題】市民革命と産業革命
- イギリスのエリザベス1世やフランスのルイ14世などが行った専制政治を何というか。
- 商工業者などの市民階級が、自由と平等をめざして国王の専制政治を倒した革命を何というか。
- 1642年に、イギリスでクロムウェルが市民を率いておこした革命を何というか。
- 1688年にイギリスでおこった、血を流さずに行われた改革を何というか。
- 1689年に、新国王とイギリス議会の間で結ばれた政治の取り決めを何というか。
- 人間は生まれながらにして自由と平等の権利を持っているとして、専制的な王に対して民衆が抵抗する権利を持つことを説き、名誉革命を支持した啓蒙思想家は誰か。
- 『法の精神』により、司法・立法・行政の三権による三権分立を説いた啓蒙思想家は誰か。
- 『社会契約論』により、人民主権の考えを説いた啓蒙思想家は誰か。
- 1775年に、アメリカでおこった戦争を何というか。
- 1776年にアメリカで、人間の平等、自由などが宣言されます。この宣言を何というか。
- アメリカの初代大統領となった人物は誰か。
- アメリカはいくつの州で独立したか。
- フランスではこの当時、身分が3つに分かれていた。第一身分、第二身分、第三身分をそれぞれ答えよ。
- 1789年にパリの民衆がバスティーユ監獄を襲撃しておこった革命を何というか。
- 14の革命の結果、何という宣言が出されたか。
- 1804年、国民投票で皇帝となり、ヨーロッパの大部分を支配した人物は誰か。
- 16の人物が没落するきっかけとなったのは、どの国への遠征が失敗したからか。
- 18世紀後半、イギリスで始まった社会や経済のしくみの変化を何というか。
- 18の結果、イギリスは何と呼ばれるようになったか。
- このころに利用されていた機械は、主に何を燃料としていたか。
- ワットは何を改良したか。
- 蒸気機関車を発明した人物は誰か。
- 生産の元手になる資本を持つ者が、労働者を雇って生産する社会のしくみを何というか。
- 貧富の差は23に原因があると考え、平等な社会を目指した思想を何というか。
- 24の思想を唱え、20世紀の労働問題に影響を与えた人物は誰か。
【解答】市民革命と産業革命
- 絶対王政
- 市民革命
- 清教徒革命(ピューリタン革命)
- 名誉革命
- 権利の章典(権利章典)
- ロック
- モンテスキュー
- ルソー
- アメリカ独立戦争
- 独立宣言
- ワシントン
- 13
- 第一身分:聖職者(僧) 第二身分:貴族 第三身分:平民
- フランス革命
- 人権宣言
- ナポレオン
- ロシア
- 産業革命
- 世界の工場
- 石炭
- 蒸気機関
- スティーブンソン
- 資本主義
- 社会主義
- マルクス
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