中学国語で登場する文学史について学習します。文学史の学習はとにかく覚えることが重要です。奈良時代の古事記から現代の文学まで、特に重要な作品とその特徴を紹介します。
文学史のポイント
文学の流れを理解するとともに、入試やテストでよく問われる内容を理解していきます。解説の太字やふと赤字の内容は特に重要ですので必ず覚えるようにしましょう。歴史の学習にも役立つので」、一石二鳥の内容となっています。
中学国語「古代の文学作品」
古代の文学作品について学習します。奈良時代の古事記・日本書紀から、国風文化が栄えた平安時代までの作品です。日本に渡来人により文字が伝わるまでは、神話や伝記・歌謡などが語部や民衆によって口伝えに語られてきました(口承文学)。渡来人により漢字が日本に伝わると、万葉仮名が発明され、口承文学が文字で記録される記載文学に変わります。
奈良時代の文学の特徴は、男性的で力強く、素朴な感情をありのままに表現し、生の喜びにあふれていることです。平安時代になると、仮名文字の発明で、国語の表記が自由になります。宮廷につかえる女官の中から、女流作家が多く出て活躍します。また、摂関政治で政権を握った藤原氏を中心とした貴族文学・和歌文学が栄えます。そして、平安時代の終わりには説話文学や歴史文学も登場するようになります。
以下重要な作品を一覧表にまとめています。
作品名 | 作者・編者 | 解説・内容 |
古事記 (こじき) |
太安万侶 (おおのやすまろ)編 |
わが国最古の物語的歴史書。稗田阿礼の暗唱に基づいて、日本国家成立の神話・伝記などを記録。 |
風土記 (ふどき) |
編者不明 | 国々の地名のいわれ・産物・伝説などを、朝廷が国司に書かせた地理書。 |
日本書紀 (にほんしょき) |
舎人親王 (とねりしんのう)ら編 |
神代から持統天皇までを年代順に編集した歴史書(編年体)。歌謡以外は漢文で表記。 |
懐風藻 (かいふうそう) |
淡海三船 (おうみのみふね)ら編? |
わが国最古の漢詩集で、中国史の影響を大きく受けている。 |
万葉集 (まんようしゅう) |
大伴家持 (おおとものやかもち)ら編 |
わが国最古で最大の和歌集。天皇から農民まで、あらゆる階層の歌がおさめられている。五七調で力強く、素朴な男性的な歌が多い。 |
竹取物語 (たけとりものがたり) |
作者不明 | わが国最古のかな書きの物語。伝説的・空想的な物語。 |
伊勢物語 (いせものがたり) |
作者不明 | 在原業平をモデルにした歌物語の短編集。 |
古今和歌集 (こきんわかしゅう) |
紀貫之 (きのつらゆき)ら編 |
わが国最初の勅撰和歌集(朝廷の命令で編纂)。七五調で、優美かつ技巧的な歌が多い。 |
土佐日記 (とさにっき) |
紀貫之 (きのつらゆき) |
男性がひらがなで書いた、土佐から京に帰るまでの旅日記。 |
蜻蛉日記 (かげろうにっき) |
藤原道綱の母 (ふじわらのみちつなのはは) |
平安時代の女流作品。『源氏物語』はじめ多くの文学に影響を与えた。 |
枕草子 (まくらのそうし) |
清少納言 (せいしょうなごん) |
女性らしい鋭い観察や才知のあふれる簡潔な文章でつづられた随筆集。「をかし」を美の第一理念とした。 |
源氏物語 (げんじものがたり) |
紫式部 (むらさきしきぶ) |
平安朝の宮廷社会に生きる人々の生活を深い感情「もののあはれ」を持って描かれている。 |
更級日記 (さらしなにっき) |
菅原孝標の女 (すがわらのたかすえのむすめ) |
宮廷生活を描いた、自叙伝的な日記。 |
今昔物語集 (こんじゃくものがたりしゅう) |
編者不明 | インド・中国・日本の民間に伝わる珍しい話を集めた日本最大の説話集。 |
梁塵秘抄 (りょうじんひしょう) |
後白河法皇 (ごしらかわほうおう)編 |
今様・神楽などを集めた歌謡集。 |
山家集 (さんかしゅう) |
西行法師 (さいぎょうほうし) |
武士であった西行が出家し、自然と旅に一生を送った個人歌集。 |
中学国語「中世の文学作品」
中世の文学作品について学習します。鎌倉時代の新古今和歌集から安土桃山時代までの作品を紹介します。中性は武士が政治の実権を握り、戦乱や天災が続いた時代です。その結果、民衆や武士にも仏教が普及し、世をはかなんで現実から逃れて静かな心境を求めたり、仏教の無常観を中心とした随筆や軍記物語が書かれました。
また、庶民の間からは、俳句のもととなる連歌や御伽草子が生まれるとともに、新しい芸能である能や狂言も完成を見せます。以下の作品を覚えましょう。
作品名 | 作者・編者 | 解説・内容 |
新古今和歌集 (しんこきんわかしゅう) |
藤原定家 (ふじわらのさだいえ)ら編 |
宮廷の人々の歌を中心とした勅撰和歌集。七五調で、静寂な境地や余情のある作品が多い。 |
方丈記 (ほうじょうき) |
鴨長明 (かものちょうめい) |
人生のはかなさや天災地変の起こる不安な世相を描いた随筆集。 |
金槐和歌集 (きんかいわかしゅう) |
源実朝 (みなもとのさねとも) |
素朴な万葉調の歌を集めた個人歌集。 |
宇治拾遺物語 (うじしゅういものがたり) |
編者不明 | 今昔物語の流れをくみ、民衆の生活感情を生き生きと描いた説話集。 |
平家物語 (へいけものがたり) |
作者不明 | 平家一門の栄華と滅亡を洗練された和漢混交の文章で書く。琵琶法師の語り物で有名。 |
古今著聞集 (ここんちょもんじゅう) |
橘成季 (たちばなのなりすえ) |
不思議な話や滑稽な話分類して、年代順に並べた説話集。 |
十六夜日記 (いざよいにっき) |
阿仏尼 (あぶつに) |
実子の藤原為相の領地回復訴訟のために、京都から鎌倉へ下ったときの旅日記。 |
徒然草 (つれづれぐさ) |
吉田兼好(兼好法師) (よしだけんこう) |
自然や人事・見聞・評論・人生観などをまとめた随筆集。枕草子・方丈記とともに三大随筆と呼ばれる。 |
太平記 (たいへいき) |
作者不明 | 北条氏滅亡から足利幕府成立までの動乱期の物語。 |
風姿花伝 (ふうしかでん) |
世阿弥元清 (ぜあみもときよ) |
能楽の修業・演出について書かれた芸能書。 |
天草本伊曽保物語 (あまくさほんいそほものがたり) |
イソップ原作 | イソップ物語をローマ字つづりにした口語の訳本 |
中学国語「近世の文学作品」
近世の文学作品について学習します。江戸時代の作品を紹介します。江戸時代には、商人を中心とする町人が、武士に劣らぬ力を持ってきた時代です。町人の間には庶民文学が起こりましたが、武士や貴族は和歌・漢詩文・古典を愛しました。
江戸時代の文化は、前期は京都・大阪の上方を中心に栄え、後期は江戸が文化の中心になります。以下の作品を覚えておきましょう。
作品 | 作者・編者 | 解説・内容 |
日本永代蔵 (にっぽんえいたいぐら) |
井原西鶴 (いはらさいかく) |
世相や人情を描いた写実的小説である浮世草子。 |
奥の細道 (おくのほそみち) |
松尾芭蕉 (まつおばしょう) |
江戸から東北・北陸を巡った俳句交じりの紀行文。「わび・さび・軽み」の境地を開く。 |
曽根崎心中 (そねざきしんじゅう) |
近松門左衛門 (ちかまつもんざえもん) |
町の心中事件を描く人形浄瑠璃の脚本。 |
誹風柳多留 (はいふうやなぎだる) |
柄井川柳 (からいせんりゅう)編 |
機知に富んだ表現で、人事・風俗・世相をとらえた川柳集。 |
雨月物語 (うげつものがたり) |
上田秋成 (うえだあきなり) |
中国・日本の古典を素材にした怪談小説。 |
蕪村句集 (ぶそんくしゅう) |
与謝蕪村 (よさぶそん) |
絵画的・夢幻的な美しい句集。 |
古事記伝 (こじきでん) |
本居宣長 (もとおりのりなが) |
「古事記」の解釈書。 |
東海道中膝栗毛 (とうかいどうちゅうひざくりげ) |
十返舎一九 (じっぺんしゃいっく) |
江戸に住む弥次郎兵衛・喜多八の二人が、東海道を旅するユーモアあふれる道中記。 |
南総里見八犬伝 (なんそうさとみはっけんでん) |
滝沢馬琴 (たきざわばきん) |
里見家のために家臣の八犬士が活躍する、勧善懲悪の長編伝奇小説。 |
おらが春 | 小林一茶 (こばやしいっさ) |
晩年の恵まれない身辺を、日記風の随筆と俳句でつづる。人間味あふれる表現が特徴。 |
中学国語「近代の文学作品」
近代の文学作品について学習します。明治・大正時代の作品を紹介します。明治時代になると、西洋文化が広まり、生活やものの考え方に変革が迫られます。その中で、物事をありのままに描く写実主義や主体性をもって生きようとする浪漫主義の文学が台頭し、人間の自我が追及されました。
その後は、写実主義が徹底され、自然主義となって開化します。それに対し、反自然主義が興り、人道主義に根差す白樺派や新浪漫主義の文学が生まれます。以下の作品を覚えておきましょう。
作品 | 作者・編者 | 解説・内容 |
小説神髄 (しょうせつしんずい) |
坪内逍遥 (つぼうちしょうよう) |
小説に写実主義の必要を説いた。 |
浮雲 (うきぐも) |
二葉亭四迷 (ふたばていしめい) |
人間の性格と心理を初めて口語体で描く。 |
たけくらべ | 樋口一葉 (ひぐちいちよう) |
下町の少年少女の恋愛を美しく描いた短編。 |
若菜集 (わかなしゅう) |
島崎藤村 (しまざきとうそん) |
叙情的な詩集。他にわが国最初の自然主義小説である『破壊』や、『夜明け前』がある。 |
歌よみに与ふる書 | 正岡子規 (まさおかしき) |
万葉調を主張した短歌論。写生を唱え、短歌・俳句革新の道を示した。 |
みだれ髪 | 与謝野晶子 (よさのあきこ) |
人間解放をうたった情熱的な詩集。 |
吾輩は猫である (わがはいはねこである) |
夏目漱石 (なつめそうせき) |
猫を通して人間社会への批判を描く。自然主義に対して余裕派と呼ばれる。 |
海潮音 (かいちょうおん) |
上田敏 (うえだびん) |
西欧の象徴詩を名訳して紹介。詩壇に衝撃を与えた。 |
邪宗門 (じゃしゅうもん) |
北原白秋 (きたはらはくしゅう) |
南国的な異国情緒に満ちた、感覚的象徴詩集。 |
一握の砂 (いちあくのすな) |
石川啄木 (いしかわたくぼく) |
生活苦や望郷の思いをうたった革新的歌集。日常語を使い、三行書きの新形式を広めた。 |
赤光 (しゃっこう) |
斎藤茂吉 (さいとうもきち) |
生命感と人間苦をうたった万葉調の名歌集。 |
道程 (どうてい) |
高村光太郎 (たかむらこうたろう) |
力強い意志をうたった男性的な詩集。他『智恵子抄』が有名。 |
羅生門 (らしょうもん) |
芥川龍之介 (あくたがわりゅうのすけ) |
今昔物語に取材し、理知的な目で人間の内面を描く。 |
山椒大夫 (さんしょうだゆう) |
森鴎外 (もりおうがい) |
人買いに売られた安寿と厨子王の話。他『高瀬舟』『舞姫』『鴈』などがある。 |
月に吠える (つきにほえる) |
萩原朔太郎 (はぎわらさくたろう) |
近代社会の孤独と憂うつをうたい、口語自由詩を大成。 |
生れ出づる悩み (うまれいずるなやみ) |
有島武郎 (ありしまたけお) |
苦難と戦う画家の姿を描く。白樺派として活躍。 |
友情 (ゆうじょう) |
武者小路実篤 (むしゃのこうじさねあつ) |
理想主義を基調として描いた恋愛小説。白樺派として活躍。 |
暗夜行路 (あんやこうろ) |
志賀直哉 (しがなおや) |
時任健作の苦悩を描いた長編小説。小説の神様と呼ばれる。白樺派として活躍。 |
風の又三郎 (かぜのまたさぶろう) |
宮沢賢治 (みやざわけんじ) |
山村の子供にもたらす幻想の世界。他『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』など。 |
伊豆の踊子 (いずのおどりこ) |
川端康成 (かわばたやすなり) |
青年時代のほのかな愛情を描く。ノーベル文学賞受賞者。 |
中学国語「現代の文学作品」
現代の文学作品について学習します。昭和・平成時代の作品を紹介します。現代の文学は、太平洋戦争時下のプロレタリア文学を経た後、戦後の人間性回復を目指す新しい文学の隆盛期を迎えます。
高度成長が進むにつれ、文学は商業化する中、ますます多様化しています。以下の作品を覚えましょう。
作品 | 作者・編者 | 解説・内容 |
測量船 (そくりょうせん) |
三好達治 (みよしたつじ) |
新しい都会感覚の現代叙情詩。 |
路傍の石 (ろぼうのいし) |
山本有三 (やまもとゆうぞう) |
世間の荒波の中を力強く生きていく少年吾一の純粋な姿を描く。 |
走れメロス | 太宰治 (だざいおさむ) |
友情と真実を力強く描いた作品。他『人間失格』など。 |
細雪 (ささめゆき) |
谷崎潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) |
大阪の旧家の四人姉妹の生き方を描く。 |
夕鶴 (ゆうづる) |
木下順二 (きのしたじゅんじ) |
民話「鶴女房」をもとにした戯曲。 |
二十四の瞳 | 坪井栄 (つぼいさかえ) |
女教師と十二人の教え子との心の交流を描く。 |
潮騒 (しおさい) |
三島由紀夫 (みしまゆきお) |
漁師新治と初江の健康的な恋を描く。 |
しろばんば | 井上靖 (いのうえやすし) |
作者の自伝的作品。 |
黒い雨 | 井伏鱒二 (いぶせますじ) |
原爆の悲惨さを描く。 |
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